更年期障害の部下にどう声をかける?管理職が知るべき適切なサポート方法

更年期障害と思われる部下への声のかけ方

50歳前後になると、男性も女性も体調にさまざまな変化が現れることがありますが、本人がその変化を「更年期かも」と自覚していないことも少なくありません。

 

 

しかし「以前はテキパキと仕事をこなしていたのに、パフォーマンスが下がった」「最近ミスが増えた」 「忘れっぽくなった」「イライラして人当たりがきつくなった」「急に怒ったり、不機嫌になることが増えた」 「暑い!と言ってエアコンを強めたがる」「顔が赤くひどく汗をかいている時がある」「あちこち体が痛いという」「眠れていないみたい」と周りの人が、更年期障害ではと心配することがあります。

 

 

特に部下がそのような状態で仕事や人間関係に影響が出ているようであれば管理職として声をかけなければ・・となるでしょう・・

 

 

ところが、「下手するとパワハラやセクハラと勘違いされるのも困るな‥」と躊躇することも多いのも事実です。

 

 

 NHK「更年期と仕事に関する調査2021」によると職場で更年期症状がどのように扱われるのが望ましいか聞いたところ、男女ともに40%近くが「職場の誰もが更年期症状や対処法について理解できる研修(職場の全員への研修)」を望んでいました。

 

 

直属の上司に相談しやすい環境、管理職以上が更年期症状や対処法について理 解できる研修を望んでいる声も聴かれ、管理職によるサポートを必要としていることがわかりました。

 

 

 

一方、「職場の人には知られたくない・自分ひとりの問題にしておきたい」という人も女性で9.5%、男性では16.8%に上りました。

 

 

更年期の話題はとてもデリケートです。

 

 

 

 では職場の管理職として、どのようにサポートすればよいのでしょうか?

 

 

 

 まず、部下が安心して悩みを打ち明けられる環境を整える上でとても重要です。特に、更年期のようなデリケートな問題については、相手が「話しても大丈夫だ」と思えるような関係性や場の雰囲気を普段から作ることが大切です。

 

 

 

ただし、更年期障害と決めつけるのは、他の病気を見逃すことになりますので、体調を確認しつつ産業医への相談や婦人科や泌尿器科への受診を勧めることが基本です。

 

 

 

 

1. 日頃から信頼関係を築く

 

 

 普段から気軽に話せる関係をつくりましょう。

 


・「最近どうですか?」など、体調や仕事の様子をこまめに気にかける。


・ 仕事の話だけでなく、ちょっとした雑談(趣味やニュースの話)も交えて、リラックスできる関係を築く。

 

一方的に指摘せず、共感する姿勢を持つ


・「私も疲れやすいことが増えましたが、○○さんはどうですか?」と、自分の経験も交えて話すことで、相手が話しやすくなる。

 

・「無理せず、自分のペースで大丈夫ですよ」と安心感を与える。

 

 

 

 

 

2. 相手の気持ちを尊重する言葉を使う

 

 

「聞く姿勢」を大切にします。なにかあれば、いつでも相談してくださいね」と、プレッシャーを与えずに選択肢を提示しておきましょう。

 


・「大丈夫?」ではなく、「何かお手伝いできることはありますか?」と相手の希望を尊重する形で声をかける。


・「何か

 

 否定せず、肯定的なリアクションをします。

 


・ もし部下が「最近疲れやすくて……」と話したら、「それは大変ですね」とまず受け止める。


・「みんなそうですよ」などの一般化はせず、「○○さんの状況を大事にしたいです」と個別に対応する姿勢を見せる。

 

 

3. 相談しやすい環境を整える

 

 

落ち着いた場所で話しましょう。

 


・ デスクの前など周りに人がいる環境ではなく、カフェスペースや会議室など、リラックスして話せる場所を選ぶ。

話すタイミングを工夫する


・ 忙しいときに「ちょっといいですか?」と話しかけるのではなく、仕事がひと段落したタイミングや、休憩時間を活用する。

無理に話させない


・「何か話したくなったら、いつでも言ってくださいね」と伝え、相手が話しやすいペースを尊重する。

 

 

 

4. 具体的な支援を提案する

 

 

 負担軽減のための選択肢を提示します。


・「最近忙しいと思うので、少し業務の割り振りを見直そうと思いますが、どうでしょうか?」


相手に選択肢を与えながら、無理なくサポートする。

 

会社のサポート制度を案内する


・「体調面で気になることがあれば、産業医や相談窓口も利用できますよ。」

 


押しつけがましくなく、選択肢を増やす形で伝えましょう。

 

 

5.更年期障害と思われる部下への声のかけ方ー具体例

 

 

他に病気がなく更年期障害と思われる部下への声のかけ方は、とてもデリケートな問題です。

 

本人が気にしていたり、無自覚だったりすることもあるため、直接「更年期では?」と指摘するのは避けるべきです。

 

以下のように、相手を思いやりながら話しかけてみてはどうでしょうか。

 

 

① まずは体調を気遣う

 

「最近、少しお疲れのように見えますが、大丈夫ですか?」
➡ ポイント:体調について気遣いながらも、更年期とは言わずに相手に話しやすい雰囲気を作る。

 

 

「このところ忙しい日が続いているので、無理をしないでくださいね。」
➡ ポイント:仕事のせいかもしれないという前提で、自然な形で労う。

 

 

② 具体的な様子に触れつつ、相談しやすい雰囲気を作る

 

 

「最近、会議中に暑そうにされていることが多いですが、室温調整など大丈夫でしょうか?」
➡ ポイント:更年期の症状の一つ(ほてりなど)に間接的に触れながら、快適な環境作りを提案。

 

 

「以前より疲れやすいように見えますが、もし何か手伝えることがあれば言ってくださいね。」
➡ ポイント:変化に気づいていることを伝えつつ、無理に話させようとしない。

 

 

③柔らかく相談を促す

 

 

「私も体調の変化を感じることがあって、生活習慣を見直しているんですけど、○○さんはどうですか?」
➡ ポイント:自分の経験も交えて話すことで、相手も話しやすくする。

 

 

「会社の健康相談室や産業医の先生にも相談できるみたいですよ。気軽に話せる場があると安心ですね。」
➡ ポイント:選択肢を示しつつ、無理に勧めない。

 

 

④仕事の調整を提案する

 

 

「最近お忙しいと思うので、業務の負担を少し調整できればと思っています。何か希望はありますか?」
➡ ポイント:仕事の調整について先に提案し、負担軽減を図る。

 

 

 

 

「フレックスタイムや在宅勤務もうまく活用できるといいですね。」
➡ ポイント:具体的な対応策を示しつつ、押し付けがましくならないようにする。


大切なのは、相手の気持ちを尊重し、無理に踏み込まず、話しやすい雰囲気を作ることです。

6.会社として組織的な取り組み

以上のように部下と接しても、いち管理者としては限界を感じることもあると思います。

 

 

社内で更年期障害を含む女性の健康課題への取り組みを進めるには、管理者として 個別対応だけでなく、組織全体の意識を高め、支援制度を整備すること が重要です。

 


「意識づけ」「制度の整備」「職場環境の改善」 の3つの観点から行動を起こすことが効果的と言われていますので、まずは身近なメンバーで勉強会を行う、健康について話し合う、実態調査を行いデータにするなど小さなことから始めてみましょう。


 さらに「女性の健康支援が職場の生産性向上に寄与する」ことを根拠(データ・他社事例)とともに経営層や人事部に説明します。


「更年期支援=女性のためのもの」と思われがちですが、長期的には全社員の働きやすさにつながります。


管理者として、「職場の誰もが健康的に働き続けられる環境づくり」 を意識しながら、少しずつ取り組みを広げていくことが重要です。